穂積名堂 Web Novel

秘密のお話

2012/02/29 00:38:29
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秘密のお話

Hodumi
 そうだ。
 夢のような話をしましょう。
 其は泡沫にして確固たるもの。
 其は希望にして絶望たるもの。
 其は無為にして有為たるもの。

―――さぁ、夢のような話をしましょうか。

 例えば、之は死なない身体に不滅の命を持ち、不朽の精神を備えているとしましょう。
 だから之は死からとても縁遠い。
 それに……そうね、生体的に最も優れた年齢から老いる事も無い事にすれば、より素敵だわ。
 ねぇ。死なないというのは、夢のような話だと思わない?
 無限に生き続ける事が出来るのなら、それこそ出来ない事は何も無いわ。
 願い、思い、望み、そこへ向かい続けていれば、いずれそこへ辿り着くのだから。
 本来なら寿命という進化の為の足枷があるけれど、その足枷に縛られなければ次代に託すという不安も無く、全てを掴む事が出来ると思うの。
 見届ける事の出来ない子々孫々に頼る事も無く、ね。
 勿論、無限に先ばかりを見て生きるのに飽く事だってあるでしょう。
 当然ね、生きているのだから物事には流行りもあれば廃れもある。
 同じ事ばかりを恒久的に続ける事は、進化を求める知的生命には向いていないから。
 だけど気にする事はないわ。それはなんの不思議も無い事なのだから。
 飽いたのなら、止めればいいの。
 ただそれだけで。そして、次に気の向いた事をすればいいわ。
 ひょっとしたら、そんな事が繰り返される内に輪になるかもしれないわね。
 流行りや廃れなんていうものも、長い目で見ればそうである事が多いし。
 けれど、それは世代を重ねているから。
 無限に生きるのであれば、いずれ気付いて輪を歪める事だってできるし、断つ事も出来るわ。
 方法? 簡単でしょう。
 記録を残せばいいのよ。
 とてもとても膨大な日記になるでしょうね。
 ま、これとて飽けば止めてしまうのだから、気が変わらない限り作られた輪は綺麗なのでしょうけれど。
 でも輪をそのまま廻り続けるというのも、素敵だわ。既に一度やった事なのだから、記憶に無くとも身体が覚えているかもしれない。
 そうすると、輪を廻れば廻る程輪は不安定になっていく。
 いずれは、輪の何処かで技能が熟達し完全に会得出来るでしょうから、するとその輪は小さくなる事になるわ。
 それに……そうね、会得した事をすっかり忘れてしまっていたとしても、一度得た技能なら改めて得るのに時間はさほど掛からないから、結果的にはそう変わらないし。
 それに、もし会得した事を忘れ、輪があまりに大きくなったが為に記憶からも身体からも完全に忘れ去られていたとしても、それは当人にとって無駄じゃないわね。
 そうでしょう? その辺りの判断は当人の主観に任される訳なのだし、それに、ある事に関する全てを忘れて思い出せもしない程の輪を作れるというのは、普通の寿命では実現出来ない訳だから。
 客観的には、遠大な無駄と言えるかもしれないけれど……それはそれで、死なないからこその特権よね。寿命がある身ではそんな真似は赦されないし、多分出来ないんじゃないかしら。本能的に。
 ふふ。寿命さえなければ全てを得る事も出来れば、何も得ずただただ無駄を過ごす事も出来る。
 いざそうなってみないと分からない事も多いでしょうけれど、今、この限りある身の上で予想するなら、とても素敵だわ。
 ひょっとしたら、輪が生まれないかもしれないし。
 不思議そうね? 何故なら、流行りと廃れが起こらないかもしれないからよ。
 進化とは可変であり、常に新しい何かを模索し続ける事。
 そして何故進化を望むのかと言えば、死んでしまうから。
 では、死なない身となれば?
 一体、どうなるのかしらね?
 大きな輪が生まれるのか、それとも遮二無二に一つの事にばかりいつまでも夢中になれるのか。
 はたまた、第三の可能性に浸るのか。
 これはとてもとても興味深いわね?
 でもね、答えを得るのに確実な方法があるの。
 もう分かるでしょう?
 死なないというのは、夢のような話だと思わない?

―――なんてね。ほら、そう怖い顔しないで。折角の可愛い顔が台無しよ?

 それに言ったでしょう、夢のような話をしましょうって。
 だからこれは、全て夢が如く泡沫にして無為にして儚い、ただのお喋りよ。
 そう、ただのお喋り。
 利発なあなたなら分かるでしょう?
 これは他愛も無ければ意味も無い、私とあなた、女の子同士のちょっとしたお喋りよ。
 あなたはただ聞くばかりだったけれどね。
 あ、と。そうそう、一応言っておくけれど。
 このお喋り、他の人には内緒よ? 二人だけの秘密だからね? もし喋ったりしたら絶交なんだから。
 ふふ。
 読了頂きありがとう御座います。ここでのソロ投稿は成る程初めてですねなHodumiです。
 という訳で、短いながらも作品を掲示してみました。
 これが誰と誰のお話で、主にどちらが喋っているかは、今の所読者のご想像にお任せいたします。
 特定してみるもよし、放置していずれ示される答えを待つもよし、と。

 とまぁ、今回はこの辺で。
 いずれまた、近い内に。
Hodumi
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