穂積名堂 Web Novel

2012/02/29 02:00:21
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Hodumi
 在るが故に、何者も拒む事は出来ない。
 それは始まり。
 それは終わり。
 終わり無くして始まり無く、始まり無くして終わり無し。
 それは完全な因果であり、互いに無くてはならない輪の如き関係。
 本来なら自覚の無い生死の場合であっても同じ事。

「―――では、その関係を断ってみたらどうなるのかしら?」

 終わりの無い始まり。始まりのない終わり。
 断ち切られた輪はどうなってしまうというのか。
 始まりの無い終わりとは、即ち宇宙に還る事も無く死に続ける状態の事。
 肉体の全器官がその働きを完全に止め、その後朽ちる事も無く恒久に在り続けるという事。
 終わりの無い始まりとは、即ち永久に死ぬ事も無く生き続ける状態の事。
 老化をする事も無く病に罹る事も無く、その後朽ちる事も無く恒久に在り続けるという事。
 ……なのだろうか?
 それとも違う何かなのだろうか?
 結局の所分からないし、考えた所で回答が存在しないのなら、考える意味が無い。
 そんな時はどうしたら良いか?
 答えは簡潔だ。
 実際に断ち切ってみれば良い。
 未来永劫悠久無窮、遼遠悠遠万世万代久遠の彼方。
 そういうのを身を以って体験すれば、自ずと分かるに違いない。
 ただし、死に続けるままでは面白くも無いから、生き続けるままという方で。

「よし、そうと決まれば―――」 
 
 永久に生き続けてみよう。
 死から永久に遠ざかろう。
 ともかく自分で知り得る悉皆を、いつまでもいつまでも永久に知り続けてみよう。
 その為の方法はある。
 その為の手段もある。
 時間も費用も充分にある。
 そうすれば、いずれ因果から外れた事とはどういう事か、答えが分かるだろう。
 答えが分かった後の事はその時考えれば充分。

「不老の次に不死を望むのは至極当たり前の事だと思わない?」

 何者も魅了してやまない笑みを浮かべ、全てを思う儘にしてきた月の姫は、以後月の姫では無くなった。
 彼女に与えられたのは、永遠の罪と須臾の罪。三千大千世界の全てから放逐された古今に比類なき大罪。
 しかし彼女は大罪をまるで意に介さず、与えられたものよりも得たものをこそ珍重した。
 何せ不老といえど、今まで死んでしまってはそれまでだったのだ。
 彼方に故郷を見上げ、彼女は心底嬉しそうに笑っていた。



 自ら望んで因果から外れた彼女がこの先どうなるのか。
 その正確なところは、彼女以外には知り得ない。
 永く遠い、果て無き果てのその向こう―――三千大千世界も及ばない時間の遥か彼方に立った時、さて何を思うのか。
 その正確なところは、彼女以外には知り得ない。
 彼女の心は常磐の如く平常を保ち続けるのか。それとも渦潮の如く混濁を極めるのか。或いは凪の如く無となり失せるのか。はたまた熱に浮かされたが如く狂い尽きるのか。
 その正確なところは、彼女以外には知り得ない。

 永遠に。
例によって某所に投稿したものをこっちに持ってきたという感じです。
輝夜ですね。この手の話の作りは割と好きですし、得意な部類に入ってます。あっちでもレス付きませんでしたが。
尚タイトルにつきましては内容読めば分かってもらえると信じます。
分からなければ単に私の力不足なだけですがー。
Hodumi
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