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魔法の森の或る日。

2012/02/29 02:00:54
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魔法の森の或る日。

Hodumi
 ゆらゆら揺れる魔法の森。
 森全体に蔓延する魔力と、放出され続けるキノコの胞子からなる瘴気がそうさせているのか、それとも森が揺れたいから揺れているのか。
 ともかく。
 魔法の森のそんな様子には一切構わず、今日も今日とて霧雨 魔理沙は霧雨 魔理沙だった。何せ霧雨 魔理沙だし。
 黒白の装いに箒を持って、瘴気によって霧がかって見える中を適当に足の向くまま気の向くまま、あちらこちらをぶらーりぶらり。
 魔法の森はそう呼ばれるだけの不可思議空間であり、見る度行く度何かしら発見がある。だから魔法研究が上手くいかない時等の気晴らしにはうってつけなのだ。
 ただ、何と言う事はない散策の割に先程から魔理沙の足取りは微妙のおぼつかなく、時折周囲を見回しているのは何故なのだろう?
 例え不可思議空間といえど、自宅からそう離れてもいない場所。ならば行くも帰るも自由自在であり、何処がどうなっているかはある程度分かっている筈なのに。
 数歩進んでは立ち止まり、辺りを窺ってを繰り返す魔理沙は、とうとう足を止めて頬を掻いた。勿論、表情に浮かぶのは色々と窮する様。
 それは何故かと言うならば。
「……まさか……迷うとはなぁ」
 正に言葉の通りであった。
 魔理沙は己の庭とも言える場所で右も左もわからなくなってしまったのである。
 前を見れば古木の幹が鬱蒼と聳え、後ろを見ればやはりという有様で、道というべき道は無く、標という標もなく。もっとも、緑と古木と魔力と瘴気の過密状態である魔法の森で道を整備するような物好きはおらず、また獣道すら滅多に定着しない。
 普段から道なき道を突き進んできた魔理沙にとってこれは珍しくも何とも無いのだが、弱った事にどこをどう通って来たかが完全に分からなくなっていた。
 適当な木の根に腰を下ろし、さてどうしたものかと頬杖を突く。
 だが考えるまでもなく、空を行けば帰る事は容易だろう。
 そう思い顔を上へ向ける。
 風も無いのに木々はゆらゆらと揺れ動き、折り重なった枝葉は幾重にも重なって空を塞ぎ、様々に位置を変える隙間からちらほらと空の光をこちらへ落としていた。
「…………」
 無言のまま魔理沙はちょいと人差し指を上へ向け、指先に金色の魔法陣を一つ発生させる。
 直後、金色の五芒から一条の光軸が放たれ、瞬く間に空を塞ぐ枝葉にぶつかった。僅かな間だけ光軸が枝葉を押し散らしたが、すぐに光軸が押し返され、逆に散らされてしまう。
 その後さも何事もなかったかのように、枝葉はざわざわとどよめいて瞬く間に元通りになっていた。
 見上げたまま、魔理沙はこの結果に対し特に驚くでもなく、むしろ予想通りというやれやれな様子で息を吐く。
 魔法の森の植物が色々とそう簡単にいかない事は、魔法の森に住む者達全員の合致事項でもある。魔理沙も定住するまでは苦労したのだ、色々と。
「マスタースパークの一つでも撃てば……まぁ余裕なんだけどな」
 ただ、真上に撃つという事は遮蔽物の先も考慮しなければならない。
 枝葉を突き抜け空を裂いたその先には、博麗大結界があるのだ。頑強な結界だからマスタースパークの一発や二発どころか十発くらいでも揺るがなさそうだが、問題は結界ではなく結界の管理人の方である。
 以前好奇心のままに夜空へマスタースパークをファイナル発射した事があるが、その後おっかない顔貌をした博麗神社の巫女さんが札を投げ散らす様は正に夢想天生。更にはその後スキマ妖怪から地味に酷い目に遭わされ続けたのだ。例えば、不意の雨で洗濯物が全滅してたり厠で紙が無かったりアリスが物を返せとえらい剣幕で家に来たり。
 如何に魔理沙が魔理沙とはいえ、再び同じ目に遭うのを許容してマスタースパークを撃ち放つような真似は出来ない。
 なら出力を絞れば良い話だが、弾幕はパワーなので魔理沙はそういうのが苦手だった。
 マスタースパークならマスタースパーク、ストリームレーザーならストリームレーザー、マジックミサイルならマジックミサイルで、それぞれの定量分の魔力をつい目一杯込めてしまうのである。
 何故か?
 だって魔理沙だから。
 それはともかく、さてさてではどうするか。
 レヴァリエで突っ込んで枝葉を振り切れなかった場合、絡まって目も当てられなくなるだろう。だがブレイジングスターともなると結界まで突っ込んで再び酷い目に遭わされかねない。
 アースライト系をちょっとずつ増やしていけば良いだろうか。……しかし貫通させつつ自分も脱出しなければならないのであり、となるとやはり枝葉の先空の先の結界を炙る事になる。
 ノンディレクショナルの類は論外だろう。何処に何があるか分からないのだから。
「…………」
 魔理沙はどうにも、手段に関わらず何かしらの二次被害が後で自分に降りかかってくるような気がしてきた。こういう時ばかりは弾幕にブレインが必要かもしれないと思わない事もない。絶対に口には出さないが。
「んー……やっぱり歩いて帰らなきゃ駄目か」
 このまま考え続けても何の解決にもならないだろうと魔理沙は判断し、視線を下ろしよっこらと立ち上がって動く事にした。
 迷ったなら迷ったで、印をつけながら彷徨えばその内どこかに着くだろう。可能性としては、一番近い筈の自宅とか。
 箒を肩に、少しよれたとんがり帽子を被り直しながら道なき道を進みだす。
 途中、やおら振り返るなり斜め下目掛けてマスタースパークを一発。
 ミニ八卦炉からの出力がそのまま極太の光軸となり、盛大な音を立てて木の根や地面を抉っていく。
 光軸が消え、代わりに焦げた匂いが広がる中、先程魔理沙が進んだ場所に大きな窪地が出来上がっていた。
 その窪地から立ち昇る焦げた煙と臭いに、ふむと一息吐いた魔理沙は踵を返す。
 ちょっと一回りする程度のつもりだった魔理沙は軽装なので、目印になるような余分な物を持っていないからこうする他無かったのである。それに、魔法の森ではこうまでしないとすぐに再生してしまう。何せ適当な枝を手折って地に突き立てて置いても、その枝があっという間に成長して木の一本となり、迷いを助長してしまう程なのだから。
 張り出した根や苔むした地面を踏み越えて、魔理沙は窪地を中心に大体の渦巻きを描くようにして進む。多少体力を使うが、ぐるぐる回り続ければ特に見落としもなく何処かへ着くだろうと彼女は考えたのだ。

―――だが彼女は気付くべきことに気付いていない。
 魔法の森に定住できるという事、自宅周りをまるで庭のように歩けるという事は、つまり相応の優れた方向感覚を有している事になる。
 事実、高低差のある経路を行く魔理沙は窪地を中心とした渦巻きを崩さずに進んでいた。
 では何故彼女は迷ったのか?
 まだ彼女は気付いていない。
 そして描く渦巻きは崩れていく。
 知らぬ間に、確実に。
 乱れ、崩れていく。
 それに彼女は気付かない―――

「よっ……と」
 腰程の高さ程ある張り出した根を乗り越え、魔理沙は一息つく。
「やれやれだぜ」
 乗り越えた根に凭れ、そのままずずずと背を引きずって腰を下ろした後、額に浮いた汗を拭う。
 彼女は魔法使いであり箒まで持参しているものの、魔法の森の中で飛ぶというのは結構な危険がある為に少々苦労していた。森の中に濃く漂う魔力と瘴気の影響さえ受けなければ、操舵を誤る事も無いので遠慮なく飛ぶのだが。
 さてと、と魔理沙が根から身を起こした時、ふわりと風を切る音がし―――
「ん」
 後ろからの音に対し目線を上げれば、凭れていた根を飛び越え優雅に蜻蛉を切るメイドの人。
 何時如何なる時でも一挙手一投足に気を抜いていない事の証明になりそうな宙返りを決めたのは、完全で瀟洒な従者、十六夜 咲夜である。むしろ誰も見ていないからこそわざわざ蜻蛉を切ったのかもしれないが。
 ともかく空中での姿勢制御を完璧に、舞い降りるかのように着地する咲夜である。
 そんな彼女に、なんでスカートが翻らないんだよ、と魔理沙は純粋な疑問を抱いた。つまりそういう所も含めて完全で瀟洒なのだろう。
「あら」
 小篭を手にする咲夜は、魔理沙を目にして何故か表情を綻ばせた。
「珍しいな、お前がこんな所に来るなんて」
 魔理沙は不意に現れた咲夜へ好奇心を向ける。
「パチュリー様のお使いですから。ちょっとキノコを採りに」
 手に持った篭を見せながら、好奇心に素直に答えた咲夜は綻ばせたままの顔で応える。
「丁度良い所で会ったわ。出来れば貴方の知るキノコの場所を教えて欲しいのだけれど」
「キノコ? なんでまたパチュリーがそんな」
「それは存じませんわ。ただ必要だから採って来なさいとの事で」
 魔理沙が訝しげに返せば、咲夜は軽く肩を竦めた。
「……よほど平のメイドが信用できないのか? お前だって暇じゃないだろうに」
「私がお使いに出る場合、部下達の負担が激増するのは確かですわね」
 というか、メイド長が居なければ居ないだけ、部下の負担が激増するのではなく彼女の仕事が増えるだけである。何せ平のメイドは自分のテリトリー内しか何とかしないし、門番は門前から動かないし、図書館や紅魔館の主達は自分の事以外眼中に無いからだ。
 考えれば考えるだけ切なくなる状況ではあるが、しかしそんな事はおくびにも出さないメイド長である。だってそれが彼女にとっての普通だから。
「だろうな」
「それでキノコの産地だけど」
「ああキノコな。種類に拘らないんだったらそこら中に生えてるし、私の家の周りにもぼこぼこ生えてるが」
 現に、魔理沙の視界に幾つか見えているし、咲夜の足元にも一本ある。物に拘らないのであれば、とっくに小篭はキノコで一杯だろう。
「拘りますわ」
 しかしメイド長にお使いを命じた魔女は要求が肥えていた。
「あー……」
 それなら、と幾つか候補を脳内にリストアップした魔理沙だが、息を吐いてから軽く首を振る。
「面倒だな。私の家で上等なキノコの菌を採って栽培してたりするんだが、どうする?」
「なら貴方の家に行きましょう」
 率直だった。
 そして―――魔理沙も普段であれば、咲夜に言われる前にとっとと家へ案内しているだろう。
 そう、普段であれば。
「行きたいか」
「それはもう」
「……なら、一つ残念なお報せがある」
 非常にばつが悪そうに、帽子のつばを引っ張って目元を隠すようにしながら魔理沙は言う。
「は?」
「実はな、迷ってるんだよ。今」
「迷ってるって……」
 今一魔理沙の言葉が飲み込めず、咲夜は腕を組んで軽く考える。
 その際に柔らかく歪む双丘があった訳だが、外圧に対する柔乳関数に沿って形を変えるそれを魔理沙が見る事は無かった。照れ隠しに帽子を目深に被らなければ直視していたろうが、色々乏しい少女が見るには酷な光景だろう、色々と瀟洒な少女のそれは。
「そりゃ此処でに決まってるだろう、律儀に言わせるなよ。言い辛いんだから」
 ますますばつが悪くなる魔理沙である。
「あぁ……成る程」
 対し、咲夜は言われてやっと合点がいった様子だった。
「あ、そうだ。お前って私の家の場所知ってたよな?」
 ここでやっと魔理沙は帽子を上げ、咲夜を正面から見る。
 その際、形を歪めている双丘が視界に入ってちょっとだけ表情が硬くなった。すぐさま、自分と相手との年齢差(少なくとも外見から推し量れる範囲)を持ち出して心の平静を取り戻す魔理沙である。それと、霊夢とかを思い出したり。
「ええ」
「連れてってくれないか?」
「…………」
「そんな顔するなよ。こっちだって恥を忍んでるんだ」
 魔理沙は咲夜の無言とやや曖昧な表情を、自分に対するものとして受け取っていた。
 だが。
「……一つ残念なお報せがありますわ」
「お?」
「実は、迷っているの。私も」
 そういう訳なのであった。
 無言の以前、出会いの時の笑顔からして、そういう訳だったのである。
「…………」
「…………」
 微妙な間。
 微妙な空気。
 流れ行く微妙な時間。
「……よし、一人よりは二人の方が」
「……まぁ、マシね。色々と」
 魔理沙は立ち上がって背中やスカートを叩き、咲夜は静かに咳払いを一つ。
「マシだぜ」
 頷き合い、愛想笑いを浮かべ合い、それから二人は何事も無かったかのように表情を戻した。
「で、何か当てはあるの?」
 全く当てのない咲夜が先に聞く。
 魔理沙はふん、と自慢げに腰に片手をやった。
「当てならあるさ。さっきマスタースパークで印をつけた所があってな、さっきからそこを中心に渦巻きに回ってる」
「……印?」
「地面にな。ここのはやたら丈夫だから、そうでもしないとすぐ消えてしまうんだよ」
 言われてみれば、と咲夜は納得したようだ。
 が、
「ところで」
「なんだよ」
「その渦巻きに回っているという証明は、どうやって?」
「そりゃあ、あれだ。経験と慣れ、そして臭い」
 自信満々に言い切った魔理沙に、咲夜は遠慮なく溜息を吐いた。そしてそれに魔理沙がつっかかるより早く口を開く。
「その経験と慣れがあって、何で迷っているのかしら」
「…………あれ?」
「あれじゃなく。現に迷っているという状況で、その経験と慣れがどれだけ頼りになるの?」
 言って、咲夜は魔理沙へ本当にどうしてそういう態度が取れたのかしら、と容赦の無い非難の視線を向ける。
「……ならんかなぁ。頼りに」
 刺さるような視線を浴びて後頭部を掻きつつ、あまりにも苦しい魔理沙であった。言われるまでその事に何も疑問を抱いていなかった事が、余計に苦しさを増幅させている。
「なりませんわ、普通。それに、臭いとは何の臭いかしら」
「……焦げ臭くないか?」
 おずおずな魔理沙。
「いいえ、全然」
 遠慮なしの咲夜。
「……そうだな」
 冷ややかな眼差しが魔理沙には痛かった。あまりにも。
「うーん……じゃあ、やっぱり強攻策しかないか」
「強攻?」
「枝葉の天井を打ち払って、上から帰るのさ」
「上から?」
 見上げる魔理沙に促されるまま枝葉の天井を見上げ、咲夜は指先で軽く顎を撫でる。
「成る程、貴方の魔法なら簡単ね」
「いや、私がやると被害……というか事後が面倒だから、お前に任せた」
「……私に?」
「出来ないのか?」
「出来ますわ」
 即答。
 ああ言う言い方をされたらもう条件反射である。何故なら彼女は完全で瀟洒だから。
「じゃあ頼む。キノコサービスしてやるから」
 枝葉の天井から咲夜へと視線を落とし苦笑する魔理沙なのだが、同じく視線を落とした咲夜は魔理沙を見ていなかった。
「……あら?」
「ん、どうした」
 どころか怪訝な顔をする彼女に、魔理沙は問いかける。
「いえ……ちょっと」
「ちょっと?」
「……景色が変わっているような」
「そんな筈無いだろ。というかそれはアレだ、お前が森の中の風景に慣れてないだけじゃないのか? 行けども行けども木と根と苔と瘴気で薄暗くて見通し悪いから」
「……そう、でしょうね。多分」
「そうさ。と、いう訳で」
「分かっていますわ」
 ひょいと両手を挙げた咲夜は、そこに手品の如くナイフをずらりと並べた。
 そしてそれ等をいざ投じようとした瞬間、はっとした様子で予定されていた動きを中断する。
「どうした?」
 そんな咲夜に疑問を抱いた魔理沙だが、「誰か来るわ」という隙の無い応えを受けて素早く周囲に視線を巡らせた。
 こんな時に、こんな所へ、一体何が、どういう理由で、現れようというのか?
 心当たりが無くも無い魔理沙はともかく、心当たりの全く無い咲夜は今にも時を止めんばかりの様子で辺りを警戒している。
 突如張り詰めた二人の意識によって、空気が重く息苦しく変質しようかというその時。
「―――失礼、脅すつもりは無かったのですが」
 何の気負いも無く第三者の声が割り込んだ。
 それは魔理沙にとっても咲夜にとっても聞き覚えのあるその声。
 それでいて、良い思い出が全く無いという点でも共通する声だ。
 二人は同時に声の方へ振り向くと、少々離れた木の根元に人影が一つ。威厳ある冠を被り、手には笏を持った楽園の最高裁判長、四季 映姫がそこに居た。
「いつも動き回る人を捕まえるのは厄介ですが、思わぬ幸運がありました」
 流れるような足運びで木々を根々をかわしがわし現れた彼女は、笑顔で魔理沙と咲夜を見る。
「何しに来たんだ? というか良いのかよこんな所に居て」
「そうですわ。きっと今頃、あの部下も忙しいでしょうに」
 不意に現れた、しかし正直出会いたくない知己を前に、魔理沙も咲夜もあまり歓迎的ではない。
 出会って早々そんなあけすけな態度を向けられるも、軽く微笑を浮かべるだけで映姫は難なく受け流していた。
「小町は今頃長い長い幅の三途を渡っている最中。ですから少々出歩いても問題は無いのです」
 臆す事無く平然とした物言い。恐らく、生半可な事では彼女の平静は小動もしないだろう。そして、彼女の生半可は魔理沙や咲夜の生半可より遥かに範囲が広い事も間違いない。
 この映姫の態度に毒気を抜かれたか、魔理沙は微妙そうな表情になり、咲夜は曖昧な表情になる。
「……えーと、それはよっぽどの嘘吐きなのか?」
「あら、よっぽどの冷酷なのかもしれないわ」
 二人の言葉に、映姫は一度だけ首を左右に振った。
「いいえ、よっぽどの自分勝手です」
「自分勝手でも川幅が広がるのか?」
「行動によります。ただ、今回の自分勝手はあまりにも度が過ぎているので」
「気になりますわ」
 腕を組もうとした咲夜は手のナイフを思い出し、出現させた時と同様に消して腕を組む。
「例えば、育てるのが面倒になったから我が子を殺めたり。例えば、生活する上で邪魔であるとして昨日までの伴侶を殺めたり。例えば、他人の物を奪い、ついでにその他人を殺めたり。例えば、良く知りもしない他人を目が合ったから殺めたり。例えば―――」
「殺めてばっかだな。自分勝手と言うより殺人鬼じゃないのか?」
「純粋な殺人鬼というのは滅多に居ませんよ。今回は、自分勝手が災いして色々と殺めているのですから。しかも自分勝手がよっぽどなので全く反省していません」
「成る程な」
 聞き取りやすい、しかし事務的で抑揚が薄いせいで少々面白みに欠ける映姫の台詞に相槌を打った後、魔理沙はふと気になった。
「ところで」
「はい」
「何しに来たんでしたっけ」
 気になったというか脇道に逸れ過ぎて本題をまだ聞いてないというか。
「そういえば言っていませんでした。何、大した用事ではありません」
「ほう」
「単に、私の教えを真摯に受け止め、活かしているかの確認に来たというだけです」
 にっこりと、映姫は仏のような笑顔を浮かべた。
 その笑顔と言葉に、魔理沙も咲夜も辺りの風景のような気分になる。
「では貴方から。自己の生活態度を省みて、結果現在どうしていますか?」
 真っ直ぐ笑顔を向けられ、魔理沙はいかにも厭そうな顔をするも、答えなかったらどうなるか明白なので答える事にした。
「そりゃー……堂々と泥棒するようになったぜ。少なくとも嘘を吐く数も減ったしな」
 仏の笑顔が一気に曇る。
「それでは本末転倒です。嘘吐きは泥棒の始まりと言いますが、こうも見事にその通りにする事も無いでしょう。それに、嘘も盗みも罪は罪。このままでは何も変わりませんよ」
「でも舌の予備を用意しなくても良くなったろ? 両方引っこ抜かれる心配も無くなった」
 魔理沙の言葉に、更に曇りが増した。
「泥棒は腕を切り落とすものですが。今度は腕の予備を用意しますか?」
「……ぬぅ」
 押し黙った魔理沙から、「全く……」と呟きながら映姫は咲夜へと視線を向ける。
「では貴方は? 今ばかりではなく先の事を考え、死後の為に何をするようになりましたか?」
 蘇った笑顔の矛先が己に向いた事で、咲夜は少しだけ口元を引き攣らせた。
「そう……お嬢様やパチュリー様に新しいお茶を作る時、毒のある花は避けるようにしましたわ」
 仏の口から溜息が漏れる。
「それはそれで確かに良い事ですが、しかしそれは悪い事ではないという域であり、つまり当然の事です。そもそも吸血鬼や魔法使いに生半可な毒は効かないでしょう。……私が言いたかったのは、貴方は人間に対し冷た過ぎるという事です。それこそナイフの様に」
「では何をすれば」
「人間に優しくするのです。人間に。貴方と同じ人間に」
「……はぁ」
 自信に満ちた映姫の言葉に返されたのは、完全で瀟洒な従者にしては珍しい、生返事である。咲夜からすると、重箱の隅を突付く訳でもなく、人間は人間でも自分と同じ人間なんていうものは存在しないのだが。
 ともかく映姫は短く溜息を零した。
「……二人とも、酷く判りやすい目をしていますね」
「そうか?」
「あら」
 楽園の最高裁判長を映す二対の目は、煙たいだとか煩いだとか余計な世話だとか面倒だとかそういう思考が、程度の差こそあれありありと伺える。
 そんな眼差しを受け、僅かな気落ちこそすれ落胆とは程遠い映姫は、コホンと咳払いを一つ。
「確かに要らぬお世話と貴方方は思うでしょうが、しかし、良いですか? 生きている間はそれで良いのかもしれません。ですが貴方方は今のままだと死後、とても苦労する事になる。三途の川幅は広く、渡り切る前に疲れ切って消えてしまうかもしれない。そしてやっと川を渡った先で、長き裁判の後に生前の行いによって過酷な罰を受けなければならない。場合によっては何十年何百年と罰を受け続けなければならないかもしれません。私はその罰や川幅を減らす為に、このままでは罪に塗れたままの貴方達に教えを説いているのです」
 最後に「分かりますね?」と添え、うんざり気味な魔理沙と咲夜に微笑みかける映姫である。
 邪気の無い笑顔であり、悪気の無い笑顔であり。言ってしまえばだからこそプレッシャーというものが二人にはひしひしと感じられた。
「あー、つまり自分が楽をしたいが為に教えを説いてるんだな?」
「それもあります。私の仕事は繁盛こそ歓迎すれども、一人の相手にいつまでも時間をかけ続けてはいられませんから。でも、第一には貴方方の為を思っての説教だという事は肝に銘じて下さい」
「そう言われても。やっぱり死後の事なんていうのは……」
「事後では遅いからこうして事前に教えを説いているのですよ? 恩を着せるつもり等更々ありませんが、先の事を思えば―――そう、例え少しずつであろうと私の教えに沿うべきだとは思いませんか?」
「…………」
「…………」
 一言返せば幾倍の正論で返される。魔理沙も咲夜も映姫の弁舌の巧みさを前に、下手に口答えるよりはその場凌ぎでも何でもして一秒でも早くお帰り願った方が良いんじゃないか、と考えた。
「あー、まぁ、思わなくも無いが、ただその前に、だ」
「なんです?」
「立ち話で長話はどうかと思う訳だが」
 何にしてもこのままでは足が棒になってしまう。
 かといって座れば良いような状況でもない。
「それもそうですね。けれど貴方方が私の説いた教えを曲解しているが為に―――」
「あぁいや待った、うん、まだ言いたい事が山ほどありそうなのは理解した」
「なら何故遮るのですか」
 両手で制止のジェスチャーまでする魔理沙に、映姫は不審げに眉を寄せる。
「まぁまぁ。さっきの口ぶりからして、私を探しに来たんだよな?」
「ええ。先程貴方の家にも寄った所です」
―――家にも寄った。
 この簡潔な一言を、魔理沙も咲夜も聞き逃さなかった。
「聞いたか?」
「聞きました」
「何の話です」
 頷き合う二人、蚊帳の外の一人。
 数度の目配せの後、魔理沙が半歩前に出た。
「まぁ率直なところな、私も咲夜も今迷ってるんだ。道に」
「成る程。人の身ながらこのような所に住む気骨は感心しますが、迷うようでは今後住処を移してはどうですか」
「考えとこう。ところで、出来れば私の家まで連れてって欲しいんだが。ああ、話の続きは道々なり私の家なりで聞くから」
「構いませんよ」
 魔理沙の提案を快諾し、では、と映姫が踵を返そうとしたその時。
「いえ、ちょっと待って下さる?」
「どうしました?」
 咲夜の声がその動きを止めさせていた。
 目を向けた映姫が見たのは、平素よりは多少なりとも緊張の載った表情の咲夜である。
「閻魔様、私が呼び止めたという事を考慮した上で、今一度後ろを振り向いて貰えませんか」
「……後ろを、ですか?」
「はい」
 僅かだけ怪訝そうな顔を見せる映姫に、咲夜はいたって真面目に頷いた。
「んな事させてどうするんだよ」
「お願いします」
「無視か」
「分かりました」
 振り向き、そしてぴたりと止まる映姫。
「…………」
 彼女の表情は、静かな驚愕に包まれていた。
「んー?」
 そんな後姿に怪訝な声を漏らしたのは魔理沙である。
「あなたは気付いてないのね」
 対し、咲夜は映姫の態度を当然の事と受け止めていた。
「何がだ」
「おかしいですね」
「ですわよね」
「あー?」
 自分を無視して進む会話に、魔理沙が改めて怪訝な声を漏らす。
「私は確かに、私の背の方向から来た筈なのですが」
「そりゃそうだろう」
「しかし振り返って見れば、そこは私の通ってきた場所ではありません。……先程私に注意を喚起したという事は、答えは貴方が知っているのでしょう?」
「……なんだって?」
 映姫と魔理沙が咲夜を見る。
「……答えというか、見た事程度ですけどね」
「ほう」
「樹が、動いていましたの」
「樹が?」
 咲夜の言葉に魔理沙は首を傾げたが、映姫は何かしら納得がいった様子で頷いた。
「成る程、樹妖の類ですか。確かに、森、それも魔法の森というからには居ても不思議はありませんでした」
「いや、おかしいぜ」
 納得する映姫に魔理沙は首を振る。
「連中の棲家は森の奥、中心の方だ。こんな所までは滅多に来ないし、そもそもこの森に住んでる私が気付かないってのは妙だ」
 それに、と繋ぎながら映姫と咲夜を交互に見、右手の人差し指を立てた。
「大体あいつらは手足もあれば顔もある立派な生物なんだから、気配がしないってのはありえないぜ? 大体足音うるさいし」
「でも動いているわ」
 魔理沙の経験からくる知識を知っても尚、咲夜は意見を翻さない。
「そうか?」
「さっきも、私が景色が変わったような、と言ったでしょう。その時あなたはどう答えたっけ」
「あー……」
「一度瞼を閉じて、開いた後同じ景色かどうか確認してみたらどう?」
「よーし、そこまで言うんなら……」
 瞼を閉じて手で覆う魔理沙。
 たっぷり一分は経過してもまだそのままなので、咲夜が「そろそろ良いんじゃないの?」と声をかけた。
「……あ」
 魔理沙が瞼を開いた第一声がこれである。
 その一音と呆然とした表情から、もはや樹が動いている事については疑う余地が無くなった。
「でしょう。……ともあれこれで解決ですわね」
「原因を突き止めただけのように思えますが?」
「それさえ分かれば簡単ですわ。どうせ迷うのならば、邪魔を排除してまっすぐ進めばいずれ外、ですから」
 解決と断じた事に対する疑問に、咲夜は言葉だけでなく微笑と――いつの間に手にしていたのか――ナイフの煌きと共に応えた。
 疑問を口にした映姫の口から溜息が漏れる。
「それは看過できませんね。対象がなんであれ、無益な殺生は死後の責めを重くしますよ」
「無益じゃありませんわ。必要な事ですもの」
「まだ必要と断じるには早いでしょう。まずは適当な樹妖から話を聞いて、何故こんな所まで来たのかを確かめる必要があります」
「それは迂遠ですわ」
 紺色の双眸に氷のような冷たさが宿り始めるが、
「急がば回れ、です」
 対する鋼の意志を孕む双眸は些かも揺るがない。
 咲夜の強硬論と映姫の慎重論は、確かな平行線を描いているのは明らかである。
「そうは言うが、話が通じるかなー」
 それに何より空気が険悪になってきているので、魔理沙は頭を掻きながら少し大きな声で言った。
「通じる筈では?」
 返事をしたのは映姫の方である。咲夜の方はといえば、冷えた瞳を暖めるのに些細な時間を要していた。
 ともかく空気が緩んだのを感じながら魔理沙は応える。
「いや、知ってるタイプの奴等じゃないからなぁ。動きも、普通の樹がスライドしてる感じだし。足で歩いてない時点で見たことなんて全然無い」
「ならば、あなたがこの森の種を把握し切れていなかったというだけでしょう」
「それは……無い筈だが。森の中なら一通り知ってるし、何処にどんなのが居るかも把握してるんだぜ?」
 映姫の一般論は、魔理沙の知識が否定していた。とかく、魔法使いというものは己の知識に一種の信仰めいた自信を持っているものである。無論、そうでもなければ魔法使いになどなれないが。
「……では、どういう事です?」
「分からん」
 魔理沙の答えは、それを要求した者に対する即応としては褒められたものではない。もしこの後に続く言葉が無かったら、さしもの映姫も何か一言ぶつけていただろう。
「ただ、一種類にしろ多種類にしろ、新種が突然沢山湧くってのは普通じゃ考えられないだろ?」
「……そうですね。では、何処かにその……何か原因がある、と?」
「それが妥当だろう」
「妥当だけれど、一体何処にあるのかしら」
 ここでようやく咲夜が会話に参加した。そしてその〝何処〟という妥当の在り処については、言った本人は勿論、魔理沙にとっても見当が付かないのである。
 冷然とした突っ込みを受けた形になった魔理沙は、小さく呻きながら何も言えなくなってしまう。
 三方の内二方が沈黙した時、残る一方が口を開いた。
「彼等の行動の顛末を逆に辿って行けば、いずれ出会えるでしょう」
「出来るのか? そんな事」
「勿論です」
 半信半疑どころか疑の割合が9はありそうな魔理沙の言い様に、映姫は自信を以って応える。
「それに……事と次第によっては、一つ説教が必要かもしれませんから」
「ぉお、怖」
 震えて見せる魔理沙に笑顔を向けた後、映姫は既に目星を付けておいた動く樹に対し、懐から取り出した浄玻璃の鏡を向けた。
「これは……」
 直後、その樹妖の何もかもを知った映姫は、彼女にしては非常に珍しく眉尻が下がっている。白黒はっきりつける程度を得意とする彼女が判断に迷っているのだ。もしこの場に小町が居たら、彼女に出来る限りの表現力と語彙を尽くして驚愕を表現するだろう。
「どうした?」
 魔理沙に肩を叩かれ、迷いから我に返った映姫は咳払いを一つ。
「原因が分かりました。……ですが」
「分かったのなら、早急に手を打つべきでは?」
「……そうですね」
「らしくないな、閻魔様が躊躇うなんて」
 何故か今一つ煮え切らない様子の映姫に、魔理沙も咲夜も不思議そうな視線を向ける。
「理由はいずれ分かります」
 だが毅然と、映姫はそれらを受け流す。
「へえ」
「とにかく行きましょう。原因に辿り着けば私の逡巡も理解できると思いますから」
 そう行って歩き出した映姫の背を見た後、魔理沙と咲夜は軽く顔を見合わせ、それから彼女の後を追った。

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 森を進む三人。先頭の一人の足取りは確かで、少しの遅滞も無く一定の歩調を崩す事無く歩いていく。それを追う二人は、差はあれどもそれを追うのに一杯一杯だった。何せ起伏が在る上に足元が覚束無い森の中である。この場合は舗装された道路のように進める方が異常だろう。
「おーい、こっちで本当に合ってるのか~?」
 遅れ気味な魔理沙が先頭の映姫に呼びかける。
「道順としては間違っていませんよ。少なくとも方向は」
 淀みも無ければ疲れも感じない返事が、振り向く事無く発せられた。なんで息が少しも上がってないんだよ、と魔理沙は少し汗の浮いた額を手で拭う。
「不安ですわ」
「だな」
 前を行く咲夜が零した愚痴に、魔理沙は小さく賛同する。咲夜は映姫とほぼ同様、全く疲れた様子を見せていないが、森の地形には相応に苦労しているようだった。
「嘘は言っていませんよ」
 デスクワーク中心なのに卓抜した歩法でどんどん先へ行く映姫は、律儀に愚痴にすら返事をした。瞬間、この地獄耳! と魔理沙も咲夜も心の中で叫んだ。
「それはそうでしょうけれど」
 ともあれ何せ閻魔である。鬼より嘘にはうるさいんだろう。愚痴を無視できない程度には。
 それにしても、飛べればいいのに……。
 魔理沙も咲夜もそう思わずにはいられなかった。

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 一日に使う平均カロリーを大きく凌駕して、魔理沙がすっかり衰弱し、さしもの咲夜も口数が減った頃、ペースを微塵も乱さなかった映姫はようやく足を止める。
「ここです」
 疲れとは無縁であるかの様子で彼女はそう言ったが、彼女の後をどうにか追っていた魔理沙と咲夜からすれば言われるまでもない事だった。
 大穴が開いている。
 地面とか樹とかそういう所ではなく、言うなれば大気中に渦のような黒い大穴が開いて、いや浮いていた。そして、何本かの樹を巻き込んで傲然と存在する、人一人どころか十人以上が縦に並んでも軽く通れそうな球体状のそれは、この場に来る前からとっくに見えていたのだ。
「……これの何が原因なんだ?」
 大穴を明らかに警戒しながら魔理沙が言う。黒い渦の向こうから吹き付ける風は一体どこからのものなのか。まさかこれが実は扇風機であるなどと言う筈も無いだろうし。
「分かりません」
 今度は映姫が即答する番だったらしい。
 しかも性質の悪い事に、その後続く言葉が無かったのである。
「むぉ……」
 何かしらの答えを期待していた魔理沙は、今までの行程による衰弱と合わせ、がっくりと膝を落とし手を突いた。
「とにかく、この穴が原因という事なんですよね?」
 四つん這いになった魔理沙を軽く一瞥し、それから咲夜は映姫を見る。
 楽園の最高裁判長は静かに頷いた。
「新種の樹妖はこの穴から出でた事は間違いありません。その数はかなりのものですが、動きが緩やかなので発見が大きく遅れたようです」
「ここが魔法の森でなければ、現れたその時点で見つかっていても不思議じゃないでしょうけれど……」
「残念ながら魔法の森にこの穴は現れてしまっています。……さて、残しておいて良いものか、閉じるにしてもどう閉じたものか……」
 思案げに腰に片手を掛け、映姫はぶつぶつとあれやこれや考え始める。
「簡単ですわ」
 だが咲夜がそれをあっさり止めさせた。
「簡単?」
「まずは待てば良いのです。この穴から何者が出でるにせよ、出でたそれを捕まえて事情を聴取すれば良いですわ」
「荒っぽい手段は好むところではありませんが……」
「好むとか好まないとかでは無いかと思いますが?」
 にっこりと咲夜は微笑む。
 幾秒か考えた後、映姫は仕方なさそうに息を吐く。
「分かりました。ですが可能な限り友好的に行動しましょう」
「善処しますわ」
 飄々と言ってのけたメイド長の耳に、今日何度目か知れない溜息の音が届いた。

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 衰弱した魔理沙が樹陰にもたれてどうにかいつものペースを取り戻せた頃、樹陰に潜んで息を殺していた咲夜と映姫は大穴から何かが出てくるのを察知し、それぞれ違う行動に出た。
 片や大穴から現れた何者かに対し、樹陰から先制にして不意打ちのナイフを数十本。
 片や樹陰から姿を現し、対話の構えを見せようとして―――慌てて全てのナイフを笏弾で相殺にかかった。
 そして相殺による破裂音と衝撃に、大穴から出てきた何者かは目を丸くする。
「……なんだ。樹妖が出てくるかと思ったら、随分人っぽいじゃないか」
 最後に、樹陰から離れた魔理沙がそう言った。
 彼女の言うとおり、樹陰から現れたのは、極薄の紫色の髪を持ち赤い服を着た人間の姿をしている。もっとも、これが外の世界ならまだしもここは妖怪とかが跋扈する幻想郷なのだ。姿形が人間だからといって、はいそうですかという訳にはいかないのである。
「突然の失礼、まずはお詫びを。……私は四季 映姫と申します」
 機先を制する意味も含めて、ナイフと笏弾の欠片が散らばる中を歩みながら映姫は何者かに会釈程度に頭を下げた。樹妖ではなく人の形をした相手が現れた事は、彼女にとって幸運である。まして衣類を纏うだけの知性があるのなら、会話が成立する可能性は著しく高い。
 ただし、大穴の向こうとこちらとの文化的齟齬や、恐らく二重の意味で小さからぬ舌打ちをした咲夜の行為の影響に気をつけなければならないが。
「……いえ、気にしなくても良いわ。ただ……」
 映姫の言葉を受け、数度瞬いた彼女は数歩前に出ながら辺りを見回す。
「ここはやっぱり私の世界じゃないみたいね」
 そしてとんでもない事を言った後、やや大げさに嘆息した。
「まったく、禁止したのにこう堂々と穴を空けられたんじゃ、私の面目丸潰れじゃない」
「と言いますと?」
 不審げな魔理沙と怪訝げな咲夜の視線を受けつつ、映姫は問いかける。
「いえね? この前私の世界の者が勝手に他所の世界に通ずる穴を開ける技術を身に付けちゃったものだから、取り敢えず禁止して置いたのよ。色々あったし。そうしたらこの始末」
「……私の世界?」
「と、申し遅れましたね。私は神綺。この黒い穴の向こう、別の世界で神をやっているわ」
 偉ぶるでもなく、威厳を発揮するでもなく、いかにも自己紹介のついでといった形で神綺は己の身分を明かす。
「神……!?」
 言い、そして浄玻璃の鏡から必要な情報だけを見て取った映姫は、神綺の言葉が大言壮語ではなく紛れも無い真実と知り、目をまん丸くした。
「神様だって!?」
 どうでもいいのと好奇心が半々だった魔理沙は一気に好奇心側に関心が振り切れる。
「……っ!?」
 最初は疑った咲夜だが、映姫が反論しないのを見てこれは拙い事をしたかしら、と視線を泳がせていた。
 三者の驚きはそれぞれ正常のものと言えるだろう。
 勿論幻想郷にだって神様は居る。居るには居る。だが普段は滅多に人前に姿を顕さないか、丁重にお呼びだてしないと顕れてくれないものだ。神なんだか妖怪なんだか良く分からない者や、神なのに神扱いされていない者も居るには居るが、そういうのはこの際例外でいいだろう。
「えーっと……」
 目の前にいる映姫以外に、それぞれ別方向の樹陰からの魔理沙と咲夜の驚きを感じ、神綺も少し驚いた。
「こっちには八百万くらい神がいるって聞いていたのだけど。そんなに驚く事なの?」
「なんというか……目にする機会がそうそうありませんので」
 神綺の率直な疑問に、映姫はやや濁し気味に応える事しかできない。文化の違いとはいえ、想定しようのない事態には些か気後れしてしまうのも仕方が無いだろう。今の映姫を責める事が出来るのは、それこそ霊夢ぐらいしかいないに違いない。
「ふうん。沢山居る割に出てこないのね。方針が違うのかしら……私みたいに独りで世界を創った訳でもないみたいだし……」
「良く存じませんが、大体そのようなものなのだと思います」
「そう。……ところで、私の世界の住人が何か迷惑をかけていないかしら」
「……と、言いますと?」
「この穴と繋がっているのは、此処と同じく森林地帯なの。もっとも、私の所の森林は全部生きているから、森林ごと移動したりするのだけれど」
「そ、そうなんですか」
「樹だっていつも同じ所に居たい訳でもないでしょうから、私は彼らにも移動の自由を与えたのよ。そうしたら案の定」
 自由を与えた。その動機も含め、いかにも神様な台詞である。
「それで、多分この穴から出てきたのは森林地帯だと思うの。……迷惑はかけてないかしら?」
「取り敢えずは、私達は道に迷っているところですね。そちらの森林地帯が何時ごろからこちらに浸透してきたかは分かりませんが……」
 映姫の言葉に、「まぁ」と残念そうな一言を置いて、神綺は申し訳なさそうに軽く瞼を伏せた。
「そうですね。森に森が入ったのなら、迷路になったも同然。それにこちらの樹は動く事ができなくて、どうやらそれが当たり前のようだから混乱は深いものとなっている……ごめんなさいね、後でちゃんと言っておくし、ちゃんと罰も与えるから」
「罰、ですか」
 神が齎す罰となると、そのまま神罰となるのだろう。映姫としては、異文化の罰の程度がどのようなものか興味があった。異世界へ無断で侵入した場合という罪は、果たしてどの程度の罰が適当となるのか。
 興味に素直になった映姫が神綺に質問をするのを聞きながら、地味に蚊帳の外になっている魔理沙と咲夜は横目で互いの姿を見合いながらぼそぼそ言葉を交わしていた。声が小さいのはやはり向こうの会話が気になるからだろう。
「神様だってな。それもよその世界の」
「そうみたいね」
「裁判長が否定しないもんな」
「言葉を鵜呑みにするような方でも無し、何かしら信じるに値するものがあったんでしょ」
「そうなるな。それにしても森が森に入ったせいで道に迷うとか考えもしなかったんだが」
「普通じゃないかしら。或る日突然道に迷ったとしたら、それは妖精のせいだけれども」
「そういうのが好きな妖精は、森の近辺ならまだしも中の方まで入って来ないからなぁ」
「原因不明による身体能力の失調でなくて良かったというお話ですわ」
「いやはやまったく」
 肩を竦め息を吐く魔理沙から視線を変え、小柄な映姫の背を見ながら咲夜は思う。
 あの時投射したナイフは全力では無かったにしても、時間停止を以って全てが違う方向から同時に一点を目指して射出された筈である。数十―――性格には32本のナイフが一斉に刃を煌かせたのだ。
 にも関わらず、脇から発生した笏弾がその全てを正確無比に打ち砕いていたのである。
 ナイフ投げの速度と精度には能力の如何を関わらず自信があった咲夜だけに、映姫の取った対応には少々自尊心に障りがあった。それは叩けば落ちる埃のような程度だったが、森をらくらく踏破していった事も併せ、咲夜の中で映姫の存在が昨日よりも大きくなったのは間違い無い。
 軽く頭を振った後、咲夜は魔理沙との雑談と向こうの会話に耳を澄ませる。調度、映姫が大きく頷いた所だった。
「成る程、貴方はそのように考えるのですね」
「ええ。だから今回の罰の基準は、禁止した事を破った事と、異世界に迷惑をかけた事の二点。前者は前例に則っても良いし、相手の言い分を吟味した上で新しい例を追加するのも良い。後者については本来そちらの罰し方に合わせるのが筋なんだろうけど、こちらとそちらで特に何か取り決めがある訳でもないし。正式な申し立てが無ければこちらのやり方で罰するんだけど」
「宜しく取り計らって頂ければ、こちらからは特に。貴方の仰る通り、取り決めがありませんから」
「分かったわ。それじゃあそのように」
 閻魔と異界の神の会話。何人もその間に入り込む事は出来ないかに見えた。が。
「で、まだか?」
 最初の方こそ好奇心のままに耳聡くしていた魔理沙だったが、どうも飽きたらしい。堂々と会話に割り込んだ彼女の背に、呆れた咲夜の視線が注がれていた。
「あら、貴方魔法使い?」
 突然の魔理沙に対し、それを映姫が嗜めるより早く神綺が反応する。
「私は霧雨 魔理沙。普通の魔法使いだぜ」
 答えるついでに自己紹介をした魔理沙だったが、一目で魔法使いと看破された事に少なからず驚いていた。幻想郷の者であれば、彼女の出で立ちを見れば何者であるかは言われる前に大体察する。だが相手は異界の者。格好だけでそれと分かったのだと簡単に判断する訳にはいかないだろう。
「やっぱり。力はあまり強く無いようだけど、私の方でも貴方みたいな組成で魔法使いを創っているのよ」
 それはまた随分と性質の悪い魔法使いを量産しているんですね。神綺の言葉を聴いた咲夜と映姫は、そう思わずには居られなかった。
「へぇ、そうなのか」
 一方で、魔理沙は感心しつつも微妙な思いを抱いている。力が弱い等と真正面から言われては、日頃から弾幕はパワーだの派手でなければ魔法じゃないだのと豪語しているのに説得力が無くなってしまうからだ。もっとも、ミニ八卦炉の恩恵に頼っている現状、やはり力が充分かと問われると、そうでないのが正しい所である。
「それで、そちらの森は何時お帰り願えるんでしょうか」
 ばつが悪そうに口を噤んだ魔理沙に代わり、その隣に立った咲夜が改めて言った。
「それなら今すぐでも」
「……今すぐ?」
 あっさりと神綺が言うものだから、咲夜は思わず訝しげに聞き返してしまう。
「他所の世界の神については知らないけど、私は私の創ったものに対しては全知全能なの」
「成る程。神様ですものね」
「ところで貴方」
「はい?」
「夢子ちゃんに似てるわね。……ああ、夢子ちゃんて言うのは私が創った中では最強クラスの子なんだけど」
 そこで一旦区切り、神綺はまじまじと咲夜を見た。観察するような目線は受ける者にとって不快とまではいかなかったが、あまり気持ちの良いものではない。
 そして満足したのか、神綺は。
「格好と、役割がそっくりだわ。貴方は誰かに仕えているでしょう?」
「……ええ」
「後は物を投げる所とかそっくりね」
「恐縮ですわ」
 笑顔で言われてしまったものだから、咲夜としては他にどう言う事もできなかった。
 ちなみに、最強が似ている点に使われなかった事を、魔理沙がこっそり安堵していたりする。
「そういえば、貴方の名前は?」
「十六夜 咲夜と申します」
 言われるままに名乗った咲夜に、この時神綺は一瞬だけだが、何故か不思議そうな顔を見せた。
 その顔の意味する所に気付いたのは映姫だけであり、彼女は異界の神が咲夜の本名がそれでない事を何らかの形で察知したのだろう、と想像する。何せ神、それも一つの世界を創ってしまう程の力を持った神なのだ。矮小な身の常識で推し量れる範囲の外側から物事を認識していても何ら不思議ではない。
「……さて、それじゃあ映姫ちゃんに魔理沙ちゃんに咲夜ちゃん。私はあまりこちらに居る訳にもいかないから、そろそろ戻ろうと思うの」
 名前を知るなり何の躊躇も無くちゃん付けされた事に、受容と意外と不快がそれぞれの顔に少し出た。
「もうか? さっき来たばかりじゃないか」
「仕方ないのよ。よその神がいると結構落ち着かないものだから。少なくとも私はそうだし、余計な波風起こしても愉快にはなれないわ」
「すると何か土産をもらうとかいうのもダメか」
「何を言ってるのよ、何を」
「いやほら、折角だし何かレアなアイテムとかもらえないかなぁって」
「それは虫が良すぎるでしょう。感心しませんね」
「そうは言うがな」
「あ、お土産ならあげれるけど」
「本当か!?」
「でも物質は駄目ね。偶発的ならまだしも、私から直接というのはそちらの世界に不自然を生んでしまうから」
「それって何か不都合なのか?」
「一色の色に染まっている所に別の色を少しでも落としたら、もう濁って別の色になってしまうでしょう? 私は自分から進んで他所の世界をどうこうしようとは思わないの」
「むぅ、そういうもんなのか」
「……ではどういったお土産を?」
「神頼みするような事を、一つだけ微弱ながら叶えようかなーって」
 そう言われ、三者は軽く考え込む。神頼みするような事が僅かとはいえ叶うとなると―――
「やっぱり運気上昇かなぁ。満遍なく良くなりそうだし」
「では、商売繁盛の方を祈願したいと思います」
 魔理沙と映姫はすぐに答えが出た。
「分かったわ。……咲夜ちゃんは?」
 だが咲夜はすぐどころか、考えても答えが出そうに無かった。
 悪魔に仕える身であるという以前に、何か神に頼むような事が彼女には存在しなかったのである。現状に対し完璧に満足している証であろう。
「そうですね……私は保留にしておきますわ。次の機会があれば、その時にでも」
「今回みたいな偶然は当分無いと思うし、思いたいけど……良いの?」
 神綺の心配は尤もだ。こんな出会いなどそう簡単にあるものではないし、意図して出会おうとしない限りまず無いのだから。まして神綺自身が自世界と他世界との通行を禁止しているのだから、次の機会というのはもう絶望的と言っても差し支えないだろう。
「構いませんわ」
 しっかりと頷いた咲夜の隣で、魔理沙が保留にするくらいなら私が有り難く使ってやるぜとか言おうとして映姫に鋭く窘められていた。
「そう。じゃあ魔理沙ちゃんと映姫ちゃんの頼みは微弱ながら承ったわ。……どの程度反映されるかは、私も初めてだからちょっと分からないけど」
「プラス方向に働いてるんなら文句なんてないぜ」
「ですね。上がるよう取り計らって下さるのでしたら、下がるような事だけは無いでしょうから」
 少し自信なさげな神綺に、魔理沙は笑って言い、映姫はそれに賛同する。そもそも、神に願い奉るなんていうのはえてして気休めレベルでしかないのだから。
「それじゃあ、私は皆と帰るわね」
 そう言って手を挙げた神綺は、くい、と招くような仕草をした。
 途端。
「うぉ!?」
 ゴッ、と魔理沙のすぐ傍を重く大きい何かが物凄い勢いで通過して言った。煽られて帽子を持っていかれそうになった彼女は、頭ごと帽子を抱えてそれを防ぐ。
 一体何が通り過ぎていったのか魔理沙自身、それに咲夜にも映姫にも瞬間的には分からなかったが、すぐにその答えは一斉に示された。
「うわ……」
 樹である。
 それも数多の。
 恐らく神綺の手招き一つによって、大穴からこちらに来ていた樹妖が一斉に招かれているのだろう。
「あら、動くと危ないわ」
 そんな神綺の暢気な言葉が届く前に、無数の樹妖達が突進、殺到。それも驚異的な速さで。動くと危ないとか言われるまでもなく、樹妖の密度からして動ける訳もなかった。
 樹妖が暴力的な速さで次から次へと擦れ違い続ける事によって発生する強風に晒されながら、魔理沙達の思うことは一つ。せめて、事前に一言欲しかった。
 だが先程からの神綺の言動からすると、どうも自己中心的な部分がある。神だからそれは当然なのだろうが、ここは神綺の世界ではないのだからもう少し考えて欲しかったものだ。
 黒い大穴に吸い込まれるようにして、大きな樹妖から小さな樹妖までがこちらの世界から向こうの世界へと強制的に戻されていく。彼らは自由に移動できる力を得た為、その移動範囲を別世界にまで広げてしまったのだろう。好奇心とは恐ろしいものである。

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 数分後、それまでの風音の凄まじさと周囲を通り抜ける質量の重厚さにすっかり参っていた魔理沙は、それらがすっかり無くなっている事に気付くのに数秒を要した。
「…………あ?」
 元の森林に相応しい静けさを取り戻した周囲に顔を上げた魔理沙は、黒い大穴が消え失せている事に気付く。
「あら。神様の方ももう居ないわよ」
 顔を上げた魔理沙の視界に、こちらに手を差し出す咲夜の姿が映った。その時になってやっと気付いたのだが、魔理沙はその場にへたり込んでいたのである。夢想天生並のプレッシャーに晒されていたのだから仕方ないといえば仕方ないが、見れば咲夜だけでなく映姫も普通に立っていた。
「一緒に帰ったのか?」
 情けなさと羞恥に頬を染めつつ、咲夜の手を取って立ち上がった魔理沙は「何かあっさりだな」と自分でも良く分からない感想を零す。
「あちらにはあちらの事情というものがあるのですから、詮索は意味を為さないでしょうね」
 スカートの苔埃を払った魔理沙は、映姫の言葉を聞いてふと、嫌な予感に駆られた。何か忘れている気がしてならないのだ。
「さて」
 咳払い。そして、映姫は魔理沙と咲夜ににっこりと微笑みかけた。
 それは仏の笑み。
 故に魔理沙も咲夜も首筋に鳥肌が立った。神綺と彼女の世界の住人が起こした騒動のせいで忘れていた事を思い出したのだ。
「では、気を取り直して霧雨宅に向かいましょうか。話す事はまだまだ沢山あるのですから」
 本来なら刹那にでも踵を返すなり時を止めるなりして逃亡を計る所だが、相手が相手。
 魔理沙の場合、既に自宅を知られている為誰かの所に転がり込む他なく、そうした所で時間稼ぎにしかならない上事態の悪化を招くのは確実だ。
 咲夜の場合だと、逃げるに逃げれなかった。何せ逃げたら紅魔館に直接乗り込んで来かねないのであり、そんな事になったら色々と騒ぎになって結果彼女の仕事が増えてしまう。
 よって、相対効果で妙に溌剌として見える映姫の背を、魔理沙と咲夜は明らかなローテンションで追うしか無いのであった。








―――後日。
 神頼みの効果かどうかはともかく、魔理沙は長時間に渡った映姫の説教による暗鬱を吹き飛ばす程度の幸運を手にしていた。
 なんとなく気が向いたので霧雨魔法店の内装模様替えを行っていた際、棚を動かした拍子にその上の物が落ちてきたのだが、その中に無くしたと思っていた自分の魔導書を発見したのである。
 置いてそのまま忘れたか、何らかの騒動の結果たまたまそこに収まったのか。何にせよ、これで断念していた魔法研究の一つが再開できると魔理沙は勇んで森にキノコを採りに行ったのであった。

 そして、映姫の方では確かに商売繁盛の効果はあったようだ。
 ふとした思い付きから、死神の給与計算方法を固定給ではなく能率給にしてみたのである。直属の死神の裁量は閻魔に任されている為、この場合対象となるのは当然小町だ。
 申し渡された瞬間、小町はかつてない勢いで反論と異論と抗弁を言葉の限り並べたが、映姫は眉一つ動かさず、それまでの彼女の就労態度を丁寧にも表付きで解説し、挙句他死神の平均値をそこに載せたのである。自分の値が平均より下である事をまざまざと見せつけられては、流石の小町もぐうの音も出ない。
 こうして小町は半泣きになりながらも大好きなサボタージュを諦めざるを得ず、結果映姫は忙しくも好ましい職場環境を手に入れたのである。
先生の~と合わせて「或る日。」シリーズとでも例えようかなぁ。
でもこれに限らず自分の作品は大抵が「日常の切り出し」な気がするので、乱暴に解釈すると全部或る日シリーズではあるんですけども。
まぁともあれ。

……神綺以外にも見るべき点はあると思うんですよ本当。
Hodumi
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