※この作品は、Coolier様にあるプチ東方創想話ミニの作品集2に投稿されていたものです。
のんびりゆったり安穏と。そして長閑に有閑にただただ時間を貪る。
博麗神社の裏手にある縁側で煎茶を飲みつつ、霊夢は平和な現状に目を細めた。
平和なのは良い。
パターン化に頭を使う必要が無いからだ。
何事も無いのは更に良い。
全ての時間を自分の為に割り振れるからだ。まさに自由。リバティ。フリーダム。
「……ああ」
手ずから淹れた煎茶で喉を潤し、香霖堂にて購入した(ツケ。殆どかっぱらい)饅頭の甘さに舌鼓を打つ。
「何て素敵(はぁと)」
日頃誰にも見せないようなほにゃっと弛緩した顔で、霊夢は日向の世界を満喫していた。
だが数十分後、あまりに極楽すぎてううとうとと微睡に襲われかけていたところに、思わぬ邪魔が入る。、
「おーい、霊夢ー?」
表の法からそんな声がしたのだ。
「…………」
招いてもいない来客に、限り無くフラットだった霊夢の心に小波が立ち始める。
「うー……魔理沙か」
涅槃に浸かりかけていた意識を引っ張り起こし、盆に湯飲みを置いて霊夢は立ち上がった。
霊夢が表に出てくると、賽銭箱の中を覗き込んでいる魔理沙が居た。
「なにやってんのよ」
呆れた風に聞けば、
「いや。増えてるかどうか確認してたんだが」
特に悪びれもせず答えが返ってくる。
ちなみに参拝客はこのところ全く無い。というかまともな参拝客は一度も来た事が無いが。
「……呼び付けといてその態度はどうなのよ?」
「それもそうだな。ちょっと好奇心に駆られて止まらなかったぜ」
賽銭箱から顔を上げ、魔理沙は霊夢の方へ向き直った。
「好奇心……ね。死にたいの?」
「まさか。橙じゃあるまいし」
「で、何の用? お茶せびりに来たんなら、あなたの分も淹れてあげない事もない」
「そりゃ願っても無いぜ。けどそれよりも先に聞きたい事がある」
「聞きたい事? やっぱり死にたいの?」
今度は魔理沙が呆れる番である。
「……あのな。物騒な言葉を一分以内に二度も使うんじゃ無い。仮にも巫女が、そんな穢れた言の葉を使いまくってどうすんだよ」
「あー、確かにね。で、何?」
「博麗神社の御神体って何だ? パチュリーのとこでちょっと目にしたんだが、神社って拝殿と本殿に別れてるらしいじゃないか」
「そうね」
「んで拝殿ってのは要するに、今目の前にある賽銭箱やら何やらがあるこれだよな」
「まぁ、そうね」
「とすると、この奥にある本殿に御神体が奉ってあるんだろ?」
「……理屈の上ではそうだけど」
「じゃあ御神体見せてくれ」
頂戴の手を伸ばしながら、魔理沙はあけすけに言う。
「うち、本殿無いわよ?」
だが霊夢の答えは、そんな彼女を驚かせるには充分だった。
「ちょっと待て。じゃあ何か? 博麗神社は神社の名を騙ってるのか? サギだぜ」
「あのね魔理沙。ちゃんとその本最後まで読んだの? 本殿が無い場合は拝殿の後ろにあるものが御神体よ?」
「あ? じゃあ霊夢ん家?」
「違う。もっと後ろ」
霊夢の言葉に、魔理沙は不思議そうな顔をした。
「もっと後ろって言ったら、大結界しかないじゃないか」
「うん、そう。大結界」
「……大結界?」
「大結界」
魔理沙の疑問詞に霊夢は頷く。
少し考える時間を置いてから、魔理沙はぽんと手を打った。
「あー、成る程。確かに、言われてみればって気がしないでもないぜ」
「そういう事。詐欺じゃないでしょう?」
「……私が言ったのは鳥の鷺だぜ?」
「そんな言い訳は通用しない」
「まぁそう言うなって。今度来る時は良いダージリン持って来てやるから」
「縁側で紅茶を飲ませる気か」
「おつなもんだぜ?」
魔理沙の笑顔に霊夢は軽く溜息を吐く。
「まぁ良いわ。で、お茶飲むの?」
「ご馳走になるぜ」
そして再び、霊夢はまったりと時間を過ごす。
―――魔理沙が居る分、ほんの少しだけ、騒がしくなりはしたが。
のんびりゆったり安穏と。そして長閑に有閑にただただ時間を貪る。
博麗神社の裏手にある縁側で煎茶を飲みつつ、霊夢は平和な現状に目を細めた。
平和なのは良い。
パターン化に頭を使う必要が無いからだ。
何事も無いのは更に良い。
全ての時間を自分の為に割り振れるからだ。まさに自由。リバティ。フリーダム。
「……ああ」
手ずから淹れた煎茶で喉を潤し、香霖堂にて購入した(ツケ。殆どかっぱらい)饅頭の甘さに舌鼓を打つ。
「何て素敵(はぁと)」
日頃誰にも見せないようなほにゃっと弛緩した顔で、霊夢は日向の世界を満喫していた。
だが数十分後、あまりに極楽すぎてううとうとと微睡に襲われかけていたところに、思わぬ邪魔が入る。、
「おーい、霊夢ー?」
表の法からそんな声がしたのだ。
「…………」
招いてもいない来客に、限り無くフラットだった霊夢の心に小波が立ち始める。
「うー……魔理沙か」
涅槃に浸かりかけていた意識を引っ張り起こし、盆に湯飲みを置いて霊夢は立ち上がった。
霊夢が表に出てくると、賽銭箱の中を覗き込んでいる魔理沙が居た。
「なにやってんのよ」
呆れた風に聞けば、
「いや。増えてるかどうか確認してたんだが」
特に悪びれもせず答えが返ってくる。
ちなみに参拝客はこのところ全く無い。というかまともな参拝客は一度も来た事が無いが。
「……呼び付けといてその態度はどうなのよ?」
「それもそうだな。ちょっと好奇心に駆られて止まらなかったぜ」
賽銭箱から顔を上げ、魔理沙は霊夢の方へ向き直った。
「好奇心……ね。死にたいの?」
「まさか。橙じゃあるまいし」
「で、何の用? お茶せびりに来たんなら、あなたの分も淹れてあげない事もない」
「そりゃ願っても無いぜ。けどそれよりも先に聞きたい事がある」
「聞きたい事? やっぱり死にたいの?」
今度は魔理沙が呆れる番である。
「……あのな。物騒な言葉を一分以内に二度も使うんじゃ無い。仮にも巫女が、そんな穢れた言の葉を使いまくってどうすんだよ」
「あー、確かにね。で、何?」
「博麗神社の御神体って何だ? パチュリーのとこでちょっと目にしたんだが、神社って拝殿と本殿に別れてるらしいじゃないか」
「そうね」
「んで拝殿ってのは要するに、今目の前にある賽銭箱やら何やらがあるこれだよな」
「まぁ、そうね」
「とすると、この奥にある本殿に御神体が奉ってあるんだろ?」
「……理屈の上ではそうだけど」
「じゃあ御神体見せてくれ」
頂戴の手を伸ばしながら、魔理沙はあけすけに言う。
「うち、本殿無いわよ?」
だが霊夢の答えは、そんな彼女を驚かせるには充分だった。
「ちょっと待て。じゃあ何か? 博麗神社は神社の名を騙ってるのか? サギだぜ」
「あのね魔理沙。ちゃんとその本最後まで読んだの? 本殿が無い場合は拝殿の後ろにあるものが御神体よ?」
「あ? じゃあ霊夢ん家?」
「違う。もっと後ろ」
霊夢の言葉に、魔理沙は不思議そうな顔をした。
「もっと後ろって言ったら、大結界しかないじゃないか」
「うん、そう。大結界」
「……大結界?」
「大結界」
魔理沙の疑問詞に霊夢は頷く。
少し考える時間を置いてから、魔理沙はぽんと手を打った。
「あー、成る程。確かに、言われてみればって気がしないでもないぜ」
「そういう事。詐欺じゃないでしょう?」
「……私が言ったのは鳥の鷺だぜ?」
「そんな言い訳は通用しない」
「まぁそう言うなって。今度来る時は良いダージリン持って来てやるから」
「縁側で紅茶を飲ませる気か」
「おつなもんだぜ?」
魔理沙の笑顔に霊夢は軽く溜息を吐く。
「まぁ良いわ。で、お茶飲むの?」
「ご馳走になるぜ」
そして再び、霊夢はまったりと時間を過ごす。
―――魔理沙が居る分、ほんの少しだけ、騒がしくなりはしたが。